株式会社ネクストグローバルフーズ|荻野 貴匡

スケールするほど安易な現状維持は危険。店舗が増えても味にこだわり続け、一律のパッケージ化はしない。すべての『のんき』で心地よいおもてなしを提供する。

荻野貴匡(おぎの たかまさ):株式会社ネクストグローバルフーズ代表取締役社長。幼少期からボクシングに触れ、20歳でプロのライセンスを取得。その後は俳優活動なども経て、飲食業に転身。2007年、東京都赤羽に『もつ焼のんき』1号店をオープン。現在21店舗(2023年8月時点)を展開する荻野氏に、起業の裏話やスケールに対する考えを聞いた。

右腕となる人材は直感で口説いた

─荻野さんはプロボクサーを目指し、舞台俳優なども経て『もつ焼のんき』を立ち上げました。まず、具体的には何から始めましたか

すでに経営者だった友人と父から開業資金を借りました。銀行から借りるための実績も担保もないので、まずは近しい人にお世話になって。1店舗目の『もつ焼のんき』が好調だったので、2店舗目には銀行がスムーズに貸してくれました。

─創業メンバーはとても重要だと思いますが、人材採用についてはどうされましたか

創業から右腕として、現在も全幅の信頼を置く地元の後輩がいます。飲食での起業を決めた時に、直感で加わってほしいと浮かんだのが彼でした。私の想いを伝えると、彼も即決で「やります!」と言ってくれて。彼は遊び仲間の頃から目立ってたし、中でも統率力が圧倒的でした。さらに、彼が焼く姿を想像するだけで、もつ焼が美味しそうにしか思えないルックスなんです(笑)。

チェーン化しても現状維持させない味とメニュー

─経営をまったく分からずに起業されたとお聞きしてます。始めてから気づいた苦労はありましたか

ファイナンス全般です。BSやPLどころか、すべての書類がまったく理解できませんでした。しばらくは、決算書も純利益の項目だけを見てた状態で(笑)。すでに10店舗近い規模でさすがにマズいと思い、財務の先生を付けて2年ほど猛勉強しました。おかげさまで今は完璧に理解してます。

「売り上げがあったから良いものの、会社にとって重要なBSも理解できなかったのはまずいですよね(笑)」

─2年の勉強となると、多くの経営者より詳しいと思います(笑)。では、事業をスケールする上で意識されてることはありますか

一般的には、店舗が増えると味も含めた運営全体がパッケージ化される傾向があります。あまりマニュアル化されすぎると、ブラッシュアップを妨げるリスクもあるんです。私は常に味も新陳代謝させ、店舗が増えても現状維持にならない構造にしてます。外部の方に料理の顧問として加わってもらい、これまでのもつ焼きには無いメニュー開発にも力を入れてます。

雰囲気だけを真似ても本物にはならない

─各店舗のコンセプトや内装デザインは荻野さんが自ら考えてるのでしょうか

店舗のコンセプトは私が起案し、それを元に幹部でディスカッションをして、オープン後したあとも引き続き全員で磨き上げていくイメージですね。店舗デザインは、上野建築研究所の上野社長との出会いによって大きく前進しました。上野社長の店舗設計に惚れ込み、以後は全幅の信頼をおいて、こちらのコンセプトを事前にお伝えして、そこからの設計はお任せしています。ほぼ一発で「これでいきましょう!」となる設計を提案してくれる。とても気に入っている店舗前の巨大な『の』の内照看板のシンボルも上野社長の考案です。

また、コンセプトとは別に、コロナ前と後で方針を変えました。以前は初期投資を抑えつつ、2年以内で回収できる計算で内装を考えていたんです。ところが、店舗をまわっているとどこか違和感があり、行きたいお店とは思えなくなっていた。お金のない人が上澄みだけ真似したような、とてもプロがやってる雰囲気ではない感覚。味が出た老舗の内装なら雰囲気がありますが、表面だけ似せたニセモノ感は安っぽいんです。

以来、幹部とのディスカッションを経て改めてしっかりお金を掛け、「雰囲気がいい」「ここに行きたい」「居心地がいい」と感じるデザインに変えました。自分が行きたいと思えない場所では、お客様も行きたくないですよね。現場に立つスタッフにしても、自信を持てるお店のほうが気持ちよく働けますし。リニューアルした甲斐もあって、若い層のお客様にも気に入っていただいてます。

すべての『のんき』が愛される店づくり

─『のんき』は店名がキャッチーで、とても覚えやすい印象があります。改めて『のんき』のブランディングでビジネスをされて、よかったと思うことはありますか

あります。今はもつ焼きだけでなく、焼肉や焼鳥、ホルモンなども『のんき』として展開してます。お客様からは、「どの『のんき』へ行っても接客が心地いい」と言っていただける。それが目標でもあったし、『のんき』へ行けば安心というビジネスモデルにもなってます。デメリットとしては、一件のトラブルでも同じ『のんき』として認識されるので、運営には十分気をつけてます。

「メニューのコンセプトが違っても、『のんき』に行けば心地よく食べられると言っていただけるのは最高に嬉しいです」

─では、最後に今後のビジョンがあればお聞かせください

弊社には、2022年に立てた3カ年計画があります。この2023年が2年目なので、来年までに30店舗、年商30億に挑戦中です。店舗数は達成できる流れですが、売り上げの推移を見ると年商が微妙なライン。ただ、すでに公言してる計画なので、達成を目指して必死にがんばります(笑)。

─起業を決め、最も重要となる右腕を直感で口説いた荻野氏。コストを重視した店づくりを改め、すべての『のんき』で最高の時間を提供したいと拘る姿勢がインタビューから溢れていた。チェーン店になっても尚、ブラッシュアップを続けるメニューをいつか食べてみたいと思う。

会社名株式会社ネクストグローバルフーズ
住所東京都新宿区富久町16-6 西倉LKビル 7F
代表荻野 貴匡
設立2007年2月
Webhttps://next-gf.com/
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