ベイシス株式会社|吉村 公孝

新たな挑戦も評価されたが、マネタイズの壁にピボットを決断。理念に共感できる人材を育て、着実に事業をスケール。労働集約の課題を差別化に変え、上場へ向かう競争優位性に。

吉村公孝(よしむら きみたか):広島県三原市出身。岡山理科大学卒。独立系エンジニアリング会社に入社し、2年目にフリーランスのネットワークエンジニアとして独立。2000年ベイシス株式会社を設立。2021年、東証マザーズ市場(現グロース市場)に上場。現在は会社経営の傍ら、地方創生や起業家の育成などにも尽力。立ち上げというテーマに沿って、人やお金、上場までの道のりについてお聞きした。

ネットワーク作りの受託からスタート

─まずは、吉村さんが起業する際に具体的に行なったことからお聞かせください

前職を退職後、数年間はフリーランスのネットワークエンジニアとして受託型のビジネスをしていました。そのまま法人化すれば安定した収益を見込めたわけですが、無謀にも新しいサービスを作ろうと思ったんです。携帯電話向けのオプトインメール(ユーザーに許諾を得た上で配信する広告メール)で、日経新聞に掲載されるほどアイディア自体は評価されました。ところが、このビジネスモデルはマネタイズに非常に時間が掛かる。資金力が無い上に、当時はエクイティ調達の知識もなく、創業1年目でこれは危ないなと。そこでキャッシュ化に立ち返り、本業のインフラやネットワーク作りの受託に集中しました。

─若さゆえの挑戦とはいえ、吉村さんがオプトインメールの先駆者だったのですね。当時は吉村さん1人で事業をスタートさせたのでしょうか

最初は1人です。徐々に仲間を増やしながら、初年度は5人ほどで運営していました。フリーで活動していた人間を1人だけ誘い、あとは求人での採用です。

─吉村さんの手がける通信インフラは、労働集約型ビジネスモデルの印象があります。属人的な構造にはスケールの限界があると思うのですが、その点についてはいかがでしょうか

現在でも労働集約の要素はありますが、昔と大きく違うのはレイヤーの位置。当業界は3次受け4次受け構造の世界戦で、弊社も末端からのスタートでした。末端だと単価も安いので、どうレイヤーを上げるかが勝負になりますし、末端の下請けは楽しさにも欠けます。私は広島で起業したのですが、地方にありがちなヒエラルキーのような慣習にも苦労しました。上に上がろうとすると叩かれるし、ビジネスと無関係なしがらみが厄介です。いずれも全員にとって良くないので、しがらみのない東京で勝負しようと。その後、創業8年目ごろには全国に7カ所の拠点を広げ、社員も200名ほどまでに成長しました。

─紆余曲折がありながらも、8年で200名は凄いですね。各拠点のトップは経験者採用でしょうか

すべて社内の生え抜きです。東京へ進出した際も、統率できる社員を育てて広島エリアを任せました。その後の支店も同様で、社内から統率力、指導力のあるリーダーを選出しています。

採用で重要なのは理念と方向性への共感

─即戦力採用ではなく生え抜きを抜擢されたとのことですが、吉村さんが人材採用において意識されていることはありますか

経験者・未経験者に関係なく、やはりMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)が一番重要ですね。私が何のために会社を作り、どういうビジョンを持っているかを伝え、共感してくれる人だけを採用します。

「スキルは働きながらでも十分に身につきますので、重要なのは土台となる理念や方向性への共感だと思っています」

─スキルや実績があっても、いざ一緒に仕事してみると相性が悪いなんてこともありますよね

おっしゃる通りです。また、能力は高くても人間性に問題がある人材に悩む経営者がいます。そういう意味でも組織に人柄は欠かせない要素。極論を言えば、それほど有能でなくても理念を共有できる人のほうが、長期的には組織にとってメリットは大きいと思います。

上場まで100%自己資本の理想的な運営

─資金調達についてもお聞きしたいのですが、上場に向けてどのように準備されたのでしょうか

私は上場前は100%自己資本でやっていたので、以前からお付き合いがあった人たちに持ってもらおうかなくらい。エクイティ調達もほとんどせず、上場前のタイミングに少しだけ入れる程度でした。資金に困っていなかったので、外部からは4%しか入れていません。残りの96%のうち、7%が従業員で私が89%なので、大半を私が持っていた状態でした。

─健全を超えて理想的な経営ですね

ですから、上場時に私が少し売り出すのと、あとはIPOで調達してギリギリ25%を流動させました。おっしゃる通り、私が70%ぐらいなので理想的と言えます。

独自の競争優位性が、株式上場の足がかりに

─2021年に上場を果たされたわけですが、創業からどのように事業をスケールされていかれたのでしょうか

以前は労働集約型のビジネスモデルで勝負していましたが、どうしても属人的な構造は差別化が難しい。そこで、ITのシステムで自動化できるツールを2015年ごろに開発しました。これは、お客様から受託するBPO的なビジネスモデルにSaaSのシステムを挟むことで、簡単に案件を管理できるツール。その結果、大きな差別化となって業界内の競争優位性に繋がっています。

「弊社の領域であるIT通信はインフラなので、ソフトウェアに弱い人が多い。ところが、弊社には自社のシステムエンジニアがいるので、アプリケーションを強化した差別化を図れたのです」

─SaaSでの施工管理と聞くと、コモディティ化されて競争優位性になりにくい印象がありますが、なぜ差別化につながるのでしょうか

確かに、建設業向けの管理システムのような、SaaSのシステムを生業とする場合は差別化が難しいです。一方、弊社はシステムを使う側なわけですから、現場のことを一番わかっています。SaaS企業にも関わらず、現場を熟知している。どちらかだけでは最適なバランスがとりにくいんです。バランスをとれるからこそ、どこよりも使いやすいものを提供できる。ビジネスモデルが大きく変化したわけではないですが、この競争優位性によって成長し、結果的に上場へと繋がったと思います。

─インフラエンジニアリング事業としてフリーランスから法人化した吉村氏。一気にアクセルを踏んで事業を成長させつつも、先見性やバランス感覚によるブレーキも備わっている稀有な経営者の印象を受けた。挑戦心と瞬時に撤退できる判断力をもち、優秀な人材を揃えることより生え抜きを育てる姿勢。最上段にあるMVVをすべての判断軸とし、先頭に立ってMVVを忠実に守り切る吉村氏の強さこそがベイシスの成長の要なのだろう。

会社名ベイシス株式会社
住所東京都港区芝公園2丁目4-1 芝パークビルB館13階
代表吉村公孝
設立2000年(平成12年)7月19日
Webhttps://www.basis-corp.jp/
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